ログイン第305話 蓮の奴、やっぱり薄情だ
食事が終わる頃には、蓮の機嫌はすっかり最悪になっていた。
どっしりと腰を据えて動こうともしない翔太を、うんざりした目で睨みつけた。
「で、言うのか?」
――夜の時間は貴重だ。一分一秒だって無駄にはできない。
それなのに、こんなところで時間を浪費させられているなんて。
蓮は腹が立って仕方なかった。いっそ、この場で翔太を蹴り出してやりたいくらいだった。
――今後、いや、明日にでも門のところに看板を立てさせてやろう。
翔太というろくでなし、立ち入り禁止。
翔太はそんな蓮を見て、呆れたように言った。
「何をそんなに急いでるんだ? 食べ終わっ
第306話 こんな息子、もういらない蓮は鼻で笑い、わずかに顎を上げると、至極真面目な顔で言い放った。「そうだ」――お前は俺の女でも何でもないんだから、気にする必要なんてない。「さっさと出ていけ!」翔太は心が折れそうになった。――見ろよ、これが友達にする仕打ちか?女にうつつを抜かして、人情まで捨てちまう男ってのは、こういうものなのか。「分かったよ。この建物には泊まらない。別棟に泊まる……これなら文句ないだろ?」今度は蓮も反対しなかった。「だったら、さっさと消えろ」翔太は言葉を失った。「……」――そんなに追い立てることないだろう?分かったよ。これ以上ぐずぐずしていたら、別棟にすら泊めてもらえなくなりそう。翔太は仕方なく立ち上がった。「じゃあ、美月、俺は先に行くよ。また明日!」「明日なんかない。さっさと消えろ」――こういう距離感のない奴が一番嫌いだ。夫婦二人きりの時間くらい、邪魔せずにそっとしておけないのか?翔太は蓮に白い目を向けた。――この男、もう救いようがないな。ここまで心が狭いと、ある意味たいしたものだ。蓮は翔太がようやく出ていったのを確認すると、すぐにス
第305話 蓮の奴、やっぱり薄情だ食事が終わる頃には、蓮の機嫌はすっかり最悪になっていた。どっしりと腰を据えて動こうともしない翔太を、うんざりした目で睨みつけた。「で、言うのか?」――夜の時間は貴重だ。一分一秒だって無駄にはできない。それなのに、こんなところで時間を浪費させられているなんて。蓮は腹が立って仕方なかった。いっそ、この場で翔太を蹴り出してやりたいくらいだった。――今後、いや、明日にでも門のところに看板を立てさせてやろう。翔太というろくでなし、立ち入り禁止。翔太はそんな蓮を見て、呆れたように言った。「何をそんなに急いでるんだ? 食べ終わったばかりなんだから、食後のフルーツくらい出てくるだろ?」「さっさと出ていけ!」蓮は立ち上がり、今にも翔太を外へ放り出そうとした。本気だと察した翔太は、慌てて両手を振った。「待て待て! 言うよ、今すぐ言うから!」「今日、美月と同じ飛行機に乗っていた、あの白井優香のことだ。実は、ちょっと気になることが分かったんだ」白井優香の名前を聞いた途端、蓮の顔がたちまち険しくなった。「そのことだけ?」その声には、明らかな威圧感がこもっていた。翔太はそんな蓮の表情など気にも留めず、話を続けた。「まあ、これだけじゃないけどな。だが、かなり重要な話なんだ。聞いたところによると
第304話 せっかくのいい気分が台無しだ蓮の一喝で、翔太は危うく鼓膜が破れそうになった。幸い、彼はとっさにスマホを耳から離し、向こうが怒鳴り終わるのを待ってから、再び耳に当てた。「おい、蓮! ドアを開けろよ! 俺は外にいるんだぞ! お前が中にいるのは分かってるんだからな……」「要件を言え」蓮の機嫌はすこぶる悪かった。――せっかくの二人きりを邪魔しやがって。こんな奴に愛想よくする気なんて起きるわけない。翔太は言葉を失った。「……」この野郎、クソったれが。「もちろん、大事な用があるんだよ。それに、早くドアを開けろ。忘れ物をしたんだ。まあ、開けたくないならそれでもいいけどな。どうせ俺は今夜、帰らないからさ……そうだ、明日は美月に、お前が子どもの頃にやらかした大騒動の話でもしてやろう。彼女、きっと喜んで聞いてくれるぞ……」――さあ、どうする? やるならお互いさまだ。俺がやれないとでも思ってるのか?蓮は言葉に詰まった。「……」――明日こそ、こいつを埋めてやる。よくもまあ、この俺を脅す気になったものだ。蓮は声を低くして言った。「そこで待ってろ。今、開けてやる……」そう言い終えると、彼はそのまま通話を切った。そしてスマホを何度か操作
第303話 来るはずのない奴蓮は美月の皿に、次々と料理を取り分けてやった。テーブルに並んだ海鮮料理を眺めていた美月は、少し考えてから口を開いた。「赤ワインを注いでくれる?」その言葉を聞いた途端、蓮の目がぱっと輝いた。「おう、任せろ!」彼は慌てて美月の前にあったジュースを下げ、デキャンタに移しておいた赤ワインを、二人のグラスに手早く注いだ。そして、美月の前にグラスを置いた。「このワインもすごくうまいぞ。そんなに酔わないから、安心して飲めよ」美月は「うん」と軽く答え、一口含んだ。――さすが高級ワインだけあって、確かにおいしい。蓮は彼女が気に入った様子で飲んでいるのを見て、嬉しくなった。しかも、どこか得意げでもあった。「このワイン、友達からくすねてきたんだ。気に入ったなら、今度また何本か持ってくるよ」美月は言葉を失った。「……」――「くすねてきた」って、つまり盗んできたってこと?だとしたら、蓮と知り合ったばかりに、その友達もとんだ災難ね。見間違いでなければ……このワイン、一本で少なくとも四百万円はするんじゃないかしら?「このステーキも食べてみろ。うまいぞ」蓮はステーキを一切れ取り分け、美月の皿に置いた。美月が一口食べると、目がぱっと輝いた。「このお
第302話 書斎で寝るなんて絶対に嫌その言葉を聞いた蓮は、伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。――書斎で寝る? そんなの、絶対に嫌だ。それこそ命に関わる。彼はすぐさま素直に言い直した。「分かった、着替えてこい!」美月はそんな彼を見て、鼻で笑った。「入ってこないで。外で待ってなさい」そして、蓮の目の前でクローゼットの扉を閉めた。蓮は言葉を失った。「……」――今夜、これで二度目の締め出しだ。いったいいつになったら、着替えを手伝わせてもらえるんだ?ちっ、せっかくイケメンの俺が着替えを手伝ってやるっていうのに、それすら断るなんて。本当に分かってないな。幸い、美月は蓮のそんな考えに気づくはずもなかった。もし知っていたら、間違いなく張り倒していただろう。彼女はクローゼットの中から自分でワンピースを一着選んで着替えた。それから、下ろしていた髪を適当にまとめて結い上げると、全体的にすっきりとした印象になった。やがてクローゼットの扉を開け、外へ出た。蓮はずっと外で待っていた。着替えを終えた美月の姿を見ると、やはり目にわずかな残念そうな色が浮かんだ。――ああ、もったいない!何着ても綺麗なのは間違いないけど、さっきの赤い寝間着は……めちゃくちゃ色っぽかった。
第301話 蓮の下心、分かりやすすぎる美月は浴室に入ってから、着替えを持ってくるのを忘れたことに気づいた。幸い、浴室には大きなバスタオルが用意されていた。――まあ、いいか。上がってから着替えればいい……とにかく、今さら彼に服を持ってきてもらうのは御免だ。ちょうど入浴しようとした、そのときだった。外からノックの音が聞こえてきた。「ドアを開けてくれ」美月は言葉を失った。「……」――この男、また来たの? まだ諦めていないわけ?彼女は気のない声で答えた。「何? 用があるなら、あとにして」「いや。着替えを持ってきてやったんだけど、いらないのか?」――もちろん、いるでしょ……「ちょっと待って」美月は清潔なバスタオルを一枚手に取り、体に巻きつけてからドアを開けに行った。蓮の手に下着と寝間着が握られているのを見ると、美月は思わず口元を引きつらせた。そして、すかさず彼の手からそれらをひったくると、目の前でぴしゃりとドアを閉めた。蓮は言葉を失った。「……?」――あぶねっ。危うく挟まれるとこだった。「本当にマッサージしてやらなくていいのか? 俺の腕前はかなりのものな